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題名が思いつかない  

何かプロットとか考えてたらプロローグを書きたくなったのでプロローグだけ書いてみる。
題名は思いつかないし続きも書くのかわからない。
ついでに推敲もしてない。
そんな小説執筆初心者あるある。
***


「ねえ、怪物が怪物たる条件を教えてあげようか?」

 覗く口蓋は朱に染まり、冷えた空気に吐息が白くたなびく。

「それはね。未知であること。おおよそ一般的なヒトに知られていないこと。そう常識でないこと。だからこその怪物なんだよ」

 伸びた犬歯が青白い街灯に照らされ妖しく光る。

「そしてね、もうひとつ」

 息とも声とも判断つかぬ唸りが喉の奥からまろびでている。

「怪物はヒトを襲うんだ」

 肉が千切れる音が悲鳴を塞き止め、血が夜を染めた。

***

 光の無い世界とはどういった感触を持つのだろうか。
 音の無い世界とはどういった感触を持つのだろうか。
 たぶん、胸を裂く不安と、気が狂うほどの不確かさ。そして未知に溢れ、倒錯的な興奮に彩られた世界。
 その片鱗――暗闇と静寂――に沈む自室にて、南部優は想像の世界に思いを馳せた。

 勤め先の雑居ビル地下に作られた書庫。そのひとつを住居として借りている南部にとって暗闇や静寂は友達のようなものであった。部屋にある物といえばソファとテーブルにガスランタン。それとうず高く積まれた無数の蔵書。利便さや娯楽を提供してくれる家電の類いは一切無い。
 勤務時間は日が暮れてから朝方までであり、外出の類いは食料品の買い出し以外あまりしない。
 元より明るく騒がしい場所が苦手な南部にとって今の生活は天国のようなものであった。

 この日、昼過ぎに目を覚ました南部は何をするでもなく妄想の世界に引きこもっていた。
 浮かんでは消える思考を弄び、現れる世界に足を延ばしては逃避する。
 仕事の時間までそうやって暇を潰すつもりであった。
 まだ学生を終えたばかりの青年としては些か活力に欠けている。そう南部自身も自覚するところではある。が、若さを漲らせ外へ飛び出していく自分を想像できないのもまた事実。南部優はそういう青年なのだとも自覚していた。
 傍から見れば無気力に、本人からすれば割合真剣に、南部はソファに横たわりただただ自らの思考の世界に浸り続けていた。

「起きているのかい?」

 甘く気だるくどこかえぐみを持つような音程。しわ枯れた少女の声帯から発せられた、とでも言うべき声が静寂を破り南部の耳朶を叩いた。
 あて先はたぶん南部であろう。しかし彼はその問いに応えることなく、黙ったままソファに寝転がり続ける。

「狸寝入りはやめたまえ。山と聞かれれば川と返したまえ。もちろん金と聞かれれば金とね」
「……意味が分からないです」
「合言葉には正しく答えよ。私が『起きているか?』と聞けば君はもし寝ていたとしても『起きている』と答えなければならない。ということだよ」
「……起きています」
「よろしい」

 “彼女”は満足げに頷いているのだろう。そう思い、南部は瞼を開け視界を巡らせた。
 既に暗闇に明順応していた瞳が部屋の中央に鎮座する声の主を捉える。そして南部はその現実感の無さに首を振った。
 確かに彼女は南部の予想通りに部屋の中央に居座っている。より正確に表現するならば部屋の中央、天井に、だ。
 そう、まるで重力がそこだけ裏返ってしまったかのように、上下さかさま、天地がひっくり返って、天井に見目麗しい少女が胡坐をかいていた。

「心臓に悪いので止めてもらえませんか? それ」
「それ、とはどれだい? 指示語は分かりやすく前後関係をはっきりとさせて使いたまえ」

 南部がソファから体を起こしながら指摘をすれば、片眉を上げながら少女はその指摘を受け流す。

「……それ――天井に張り付くのは心臓に悪いので止めてもらえませんか?」
「張り付く、という物言いは正しくないよ。私は“天井に座っている”のだ。張り付くでは虫か小型の爬虫類のように揶揄されているようで不愉快だ。謝罪を要求するよ。謝りたまえ」
「……ごめんなさい」
「よろしい」

 満足げに頷いている少女を見ながら、南部はこっそりと溜め息を吐いた。

「それで、何か僕に用ですか?」
「うん?」

 質問の意図がわからない。表情でそう示し、キョトンとしながら少女は首を傾げた。

「いや、起きてるのかって聞いたじゃないですか? 何か僕に用事があったんじゃないですか?」
「ああ、そうそう。そうだった。歳を取ると物忘れが多くて困るね」

 「歳を取った」という物言いが非常に不釣り合いな少女。彼女は“天井に立ち上がり”右腕を真上に上げ――つまり床へと垂直に右腕を向け――細い人差し指をピンと立てた。

「そこの本。取ってくれるかな。これの続きだ」

 よくよく南部が目を凝らせば、少女は左手に厚いハードカバーの本を持っている。南部が妄想に耽る最中、少女はひとり天井で本を読んでいたのだろう。だとしたら頁をめくる音すらしないとても静かな読書だった。と南部はどうでもいいことに関心をした。
 そして手持ちの一冊を読み終わったのはいいが、続きは床の上。そこで天井から動くのが億劫な少女は南部を起こし本を取らせようとしたのだ。それこそ小間使いに些事を頼む気軽さで。
 迷惑極まりない話であり、それならば最初から床の上に居ればいいのに、と南部は心の中でだけ文句を言うことにする。

「うっ……。明かりを点けるときには一言言いたまえ」

 せめてもの抵抗――嫌がらせともいう――にと予告なくランタンに火を入れ、そのあまりの眩しさに南部自身も目を背ける。闇に慣れた瞳に強い光は毒だ。
 「まったく仕方ない奴だ」とぶつぶつ呟く少女に近づき、南部は本のタイトルは何か確認しようとハードカバーの背表紙を見やる。

「えーと『伝承の中の怪物・西洋編』」

 金メッキの装飾に輝く文字を読み上げ、南部は口元を歪めた。

「あー何かの冗談ですか?」
「うん? 何がだい?」
「いや、わざわざそんなもの読まなくても――」

 真正面に位置した、逆さの少女の顔をまじまじと見た後に、万感の思いを込めて南部は口を開く。

「あなたは吸血鬼じゃないですか」

 南部の言葉に少女こと吸血鬼、葛西那由多は「まあね」とほほ笑んだ。


【思いつかない題名】~怪物の条件~
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