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2011年09月の記事一覧

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魔術サークル2  


 夜の帳が降りたと言うけれど。夜闇が降りる様子を垂れ布が降りる様子に喩えたのだとしたら、都会では通じない比喩になりつつあるな。
 そう思いつつ、橘花は空を見上げた。

 確かに夜を感じさせる紫色の闇は時間と共に降りてくる。でもある程度まで来ると、それ以上下には降りられなくなる。街の光が強すぎるのだ。煌々と輝く人工の光は太陽光を模すように地上にある。
 空を見上げた視界は真正面に闇を捉えるけど、端々から滲むように光が溢れてきて、そうしていると闇がよく見えなくなってしまうのだ。
 見えないものを見れないとはこれ如何に。
 橘花はひとりほくそ笑んだ。

 ――だけど、星まで見えなくなってしまうのはどこか寂しい。そう感じられた。

「橘花おまたせ」

「はい、待ってました。それはもう、四月の夜の風が身に沁みます」

「あう、ごめん」

 コンビニから出てきた汐梨は橘花のからかいに本当に申し訳なさそうに身を縮めた。橘花は汐梨のその小動物のような反応を見てにんまりと笑った。

「まあ私は公明正大で心優しいので許しましょう。それで、肉まんあったの?」

「あったよ」

 歩き出しながら、コンビニのビニール袋を掲げて見せる汐梨。中にはこぶし大の丸い物体が二つ入っていた。

「二個も買ったの? これから花見ついでに河川敷の出店に行こうっていうのに」

「だって、橘花も食べるでしょ?」

 心配げに小首を傾げた汐梨を見て、橘花は肩を竦めた。
 時刻は七時を回ったが、実はそれほど空腹ではない。橘花は元々食が太い方ではなかった。

「まあいいよ。奢りってんだったら食べましょう」

「良かった。いらないって言われたらどうしようって思っちゃった」
 
 胸を撫で下ろした汐梨から包装紙に包まれた肉まんを受け取り、橘花はそれを両手で持つ。
 安くて食欲を満たす他にカイロ代わりになる。コンビニの中華まんはそれなりに偉大だ。

「ねえ橘花」

「なんでしょう?」

 よほど空腹だったのか、すでに肉まんを半分ほどパクついた汐梨が大きな瞳を輝かせながら聞く。

「さっきなんで空を見てたの?」

「コンビニの外で汐梨を待ってたから」

「そういうことじゃなくて」

 拗ねるように頬を膨らました汐梨を見て橘花はまるで白くてすべすべの頬が肉まんみたいだと心の中で笑った。

「別に意味なんてないよ。ただ夜空ってほど夜空じゃないなって思っただけ」

「どゆこと?」

「ほら、こうやって空を見上げても星なんて見えないし、夜の闇だって遠いでしょ? 周りの光が近すぎるんだ」

 橘花が空を見上げたのにつられて、汐梨は空を見上げた。そして首を傾げる。

「よくわかんないね。夜空の遠さも、橘花の言うことも」

「失礼な」

 屈託のない笑みで橘花の言葉をばっさりと切り捨てた汐梨。彼女は夜空から左腕に捲かれている可愛らしい革の腕時計に視線を移した。

「夜の闇はわからないけど、星はね、これになったんだよ」

「これって、腕時計?」

「そう時計になったの。昔は星の位置や星座の有無で正確な時間や季節を知ったんだよ。星も、それを見せてくれる夜の闇も、たぶん大切な物だったんだ。でも今は時計があるから大切な物じゃなくなっちゃった。だから別に見えなくてもいいんじゃないかな」

 わかるようなわからないような。汐梨の話を聞きつつ、橘花は自分の中で好奇心がもたげてくるのを感じた。

「魔術にとっても? 何か関係あるんじゃない?」

 思ったまま、橘花は口を開いてしまっていた。
 汐梨は嬉しそうに橘花を見る。

「うん。よく魔術というだけで夜や星が重要だって思う人がいるけど、別にそんなことは無いの。魔術は確かに超自然的な現象だけど、基本は人の文明と共にある。夜や星に神秘を感じるからというだけで魔術に結びつけることはできない。じゃあ何で重要に思われているかというとね、古代は遠大な魔術研究を何か月もかけて行うときにね、星座の動きで時間を計って研究をしたの。夜だけ研究部屋から外に出て星を眺めたりね。だから魔術を知らない人にとっては、まるで夜や星の力が魔術に影響があるように思われちゃったんだ」

 嬉々として口火を切る汐梨に橘花は苦笑いを浮かべた。

「いま何か月も魔術研究をするとしても、みんなこれを使うよ」

 腕時計を一指し指でつつく汐梨。

「腕時計を生み出した。文明が魔術まで変えてしまったってこと?」

「文明が魔術を変えたんじゃないよ。魔術は認知度が低いだけで、文明の一部。文明が変われば魔術も変わる。一心同体。だから文明が夜空を必要としなくなったから、魔術も夜空を必要としなくなった」

 橘花の説明に橘花は思案してみた。

「それって、少しだけ寂しいかもね。時計の方が便利だけどさ、夜空を眺めてっていうのも割かし捨てたもんじゃなかったのかもしれないし」

「そうかな。見てみようか」

 汐梨が指を振った。
 気付くと、辺りの家や店舗から光が消えていた。車のクラクション。人の往来。店頭のBGM。雑多な夜の喧騒はまだ辺りにあるのに、地上の光だけが消えていた。

 橘花は鳥肌が全身に出てくるのを感じた。

「……凄いかも」

 空は輝く星々で埋め尽くされていた。儚さなんて微塵も無い。力強い確かな宝石のような光の礫。
 重く圧し掛かる夜闇の中で燦然と輝いている綺羅星たちに、橘花は感嘆の息を吐いた。

 と、いきなりに地上の光が戻ってきた。慣れ親しんだ色とりどりの光に星は消え、夜闇は遠くなった。

「おしまい」

 汐梨がもう一度一指し指を振ったらしい。何もかも元通りだった。

「どうだった橘花?」

 窺うような汐梨の言葉に、橘花は腕を組んだ。

「凄かったけど、私には時間はわかんないかな」

「だよね」

 夜闇も星も悪い物ではないだろうけど、自分たちの街にはあまり必要ない。夜の帳が降りなくても別に困りはしない。
 そう橘花はぼうっと考えた。

「ねえ、橘花。そんなことより早く河川敷に行こう」

 奇跡のような光景を起こしただろう汐梨本人は何事も無かったかのように歩き出す。
 肉まんは既に食べ終わり、それでも空腹なのだろう。桜を見に行こうではなく河川敷に行こうと言う汐梨に橘花はにんまりと笑った。

「花より団子だね」

「あ、橘花が何かヒドイこと言った」

 頬を膨らませた汐梨の手に、橘花は笑いながら自分の肉まんを渡した。
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